1. 実際、宿主の建築行動を操る寄生虫というのがいる。この場合には、延長された表現型は作られた構造物であり、それはある生物によって、別の生物の遺伝子の影響を受けて作られる。この寄生虫は一種のハチの幼虫、そして宿主は網を張るクモの一種だ。
    (中略)
    幼虫が成長する間、クモは一見何の影響もないように正常な網を張り、餌を捕り、成長する。しかし幼虫が完全に成長した時点で、状況が一変する。幼虫は成虫として羽化する前の蛹の段階を過ごす繭をつくる必要がある。それには安全な場所が必要だ。なんと幼虫は全く新しい構造物である「繭網(cocoon web)」をクモにつくらせて、それを利用する。
    (中略)
    クモがこの特別な網を完成すると、寄生虫はクモに残っている体液を吸い尽くして殻を捨てる。
    (中略)
    ハチの幼虫はクモの神経系と直接に接触せず、外側から血を吸っている。いったいどのような仕組みでこのように複雑かつ独特な方法でクモの行動を操るのだろうか。クモの血流に化学信号を注入するのが唯一の方法だろう。これは実験によって確認されている。
    (中略)
    寄生虫はクモに全く新しい行動をつくり出すのではない。正常な順序の一部が省かれてしまうだけのことだ。